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2005年09月06日
iPodに最適なMP3を作ろう
AACのエンコーダにおいてはiTunesがベスト
24bit/96kHz変換で音が良くなる可能性は?
一般ユーザーは24bit/96kHzの音源を入手するのは難しいので、関係ない話のように思える。しかし、波形編集ソフトなどを用いれば、リサンプリングによって96kHzに変換することは可能であり、24bitにすることもできる。
厳密にいえば44.1kHzと96kHzは倍数の関係にないため、若干の音質劣化はある。気になる人は24bit/88.2kHzというフォーマットを使った方がいいかもしれないが、とにかくハイビット、ハイサンプリングのデータへコンバートすることは可能だ。
もちろん、素材そのものの音質が向上するわけではない。ただ、24bit/96kHzや24bit/88.2kHzから直接エンコードしたほうが音がよくなるのだとしたら、ひとつの手段として利用できる。
また、前回のようにイコライザ処理をかけたり、その他のエディット作業をするのであれば、16bit/44.1kHzのまま処理するよりも、一旦24bit/96kHzなどに変換しておくことで、処理における劣化を少なくすることができ、結果として音質が向上する可能性はある。
午後のこ~だでは、24bit/96kHzのWAVファイルをエンコードできなかった
ただ、ここで疑問に思うのは、本当に24bit/96kHzから直接MP3を生成することができるのか、ということだ。まず、前回優秀だった、午後のこ~だを使い、24bit/96kHzのWAVファイルをエンコードしようとしたところ、エラーではじかれてしまった。どうも16bit/44.1kHzのWAVデータであるかどうかをあらかじめチェックしているようで、それ以外のフォーマットは受け付けないようだ。
一方、Windows Media Player 10はそもそもWAVファイルからの直接変換はサポートしておらず、24bit/96kHzの音楽CDは存在していないので、ダメ。またWindows Media EncoderはVersion 9までしかないためMP3はサポートされていない。
Exact Audio CopyでLAMEによるMP3化も試したがエラーとなった
また前回LAMEについてはExact Audio Copyを利用してエンコードしていたので、同じ環境で試してみたが、やはり16bit/44.1kHzでないということではじかれてしまった。
24bit/96kHzのダイレクト・エンコーディング自体の実現が不可能なのかと思ったが、実現できたのは、いつも使っている波形編集ソフトSound Forgeからのエンコード。24bit/96kHzのファイルを保存する際に、MP3を指定したらあっさりできてしまった。
MP3では24bit/96kHzのメリットはなし
Sound Forgeが、Fraunhofer-IISのエンコーダを使っていることはわかるが、設定項目が少なく本当にダイレクト・エンコードを行なっているのか、Sound Forgeが一旦16bit/44.1kHzに変換してからエンコードしているのかは不明。しかし、動作を見ている限りは、直接行なっているようだ。
オリジナル 24bit/96kHzの高域を3dB上げてからMP3化。オリジナルと離れた波形となった
セオリー通りに、24bit/96kHzのサウンドの高域を3dB上げてからエンコードしてみた。聞いた感じでは、あまり音質が向上した感じはなく、波形で見るとオリジナルからは遠くなってしまった。やれるだけのことはやったという自己満足はあるものの、どうやら無駄手間だったようだ。
ここでちょっと気になったのがLAME。Excat Audio Copyを使ったのが問題で、24bit/96kHzをエンコードできなかったのではないか、という疑問だ。LAMEはdllファイルのライブラリとしても提供されている一方、コマンドラインで動作するexeファイルも存在する。これまでコマンドラインで使ったことはなかったが、試しに動かしてみたところ、あっさりとエンコードできてしまった。
せっかくなので、コマンドラインで使うオプションを見てみると、たくさんある。ビットレートの変更はもちろん、クオリティーの設定やノイズシェイピングの設定、ID3-Tagに関する設定などなど。また、例のローパスフィルタを切る設定もある。
そこで、-kというローパスフィルタを切った上で192kbpsの固定ビットレートでエンコードした結果はどうだろうか? 同じオプションで16bit/44.1kHzからのエンコードをしてみたが、やはりこちらも同様に16bit/44.1kHzでエンコードした結果のほうがいいようだ。MP3に限ってということかもしれないが、試してみたエンコーダにおいては24bit/96kHzからエンコードするメリットはなさそうである。
ついでに、音の変化の違いが捉えられる楽曲サンプルを-kオプションを用いて試してみた。その結果、高域まで出るようにはなったが、波形を見るとやや妙な感じだし、聴いた感じでも午後のこ~だのほうがオリジナルに近い感じだった。
iTunesのAACエンコーダは向上
最後に、iPod用というならMP3ではなくAACを使うべきだろうという意見が多数寄せられているので、これについても触れておこう。MP3にこだわっていたのは個人的な趣味だが、AACにしてしまうと、転送可能なプレーヤーがiPodに限定されてしまうのが嫌だった。そこで、汎用性の高いMP3にしていた。
AACへのエンコードはiTunesで行うのが一般的だが、iTunesのAACエンコーダの性能チェックは2003年にやったきり。その後エンコーダが性能アップした可能性もあるので、改めて現行のiTunes 4.9を使いMP3と同様128kbpsと192kbpsでテストを行なってみた。
本来いろいろなデータで試してみないとわからないが、このサンプルにおいていうとハイハットの音だけに注目するとMP3との違いがある程度見えてくる。例えばFraunhofer-IISの128kbpsとiTunes AACの128kbpsを比較すると、圧倒的にAACのほうが原音に近い。また同じMP3の192kbpsと比較してもAACの128kbpsのほうが原音に近い。MP3におけるフランジャーを掛けたようなひずみがないのだ。
さらに、AACを192kbpsまで持っていくと、さらに原音に近づいた感じで、普通に聴く分には原音との差をほとんど感じないほどだ。これは波形を見てもある程度わかる。波形上は、かなり上まで出ているが、実際の動きを見ると128kbpsでは18kHzまでがしっかり出ていて、それ以上はかなりあいまいな音だ。さらに192kbpsでは19kHzまでが出ているという感じである。
こうした点を見ても、音質だけに着目するならMP3よりAACのほうがいいというのが実情のようだ。また、2003年当時のiTunesより明らかにAACエンコーダの性能は向上しているようである。
AACならiTunesに軍配
では、iPodで利用可能なAACへのエンコーダはこのiTunes搭載のものしか選択肢はないのだろうか? AACエンコーダとして国内で著名なものとしてパナソニックのSD-Jukeboxがある。現行バージョンは5となっているが、手元にバージョン4があったので、これで試してみた。
エンコードの結果、拡張子saacというファイルが作り出されるが、このままではiTunesで読み込むことができず、拡張子をm4aなどに変更してみたがダメだった。
そこで調べてみると、使えそうなエンコーダがいくつか見つかった。そのひとつがCDライティングソフトとして有名なNero。これのデモ版がダウンロード可能で、試用期間の制限はあるものの、AACエンコードができた。出来上がったファイルを、iTunesで読み込ませてみると、無事再生することができた。こちらもビットレートの設定ができるので、比較しやすいように固定ビットレートの128kbpsと192kbpsで試してみた。やはりハイハットにおけるMP3のようなひずみはないながら、イコライザをかけて音色を変えたような感じで原音とは明らかに違う。
iTunesのAACのほうが原音に近い。192kbpsのほうがよくはなるのだが、これでも音色の違いを感じる。試しに波形を見ていると、傾向としてはMP3のように16kHz、18kHzあたりでバッサリとカットされているが、音の違いは高域成分以外のところからもいろいろ出ているようだった。
もうひとつ見つかったエンコーダが、オープンソースのFAACというツール。Linux版やMac版があるほかに、Windows用にコンパイルされたバイナリが見つかったので、これを試してみた。LAMEと同様にコマンドラインの操作となるが、デフォルトの設定でエンコードしてみた結果ではiTunesで読み込むことができなかった。しかし、オプションを調べてみると-wというMPEG4コンテナにラップするというものがあったので、これを試したところ拡張子m4aのファイルが生成され、そのままiTunesで再生できた。
ただ、このエンコーダは固定ビットレートというものがなく、可変ビットレート(VBR)および平均ビットレート(ABR)であり、かつ最高でABR152kbpsということだったので、これを使ってみた。
オリジナルとは波形が変わってしまった
ヘルプを見ても16kHzでのローパスフィルタをかけているとのことだったが、そうなっていることは波形からも確認できる。その音を聴いてみると、ニュアンス的にはNeroのAACの128kbpsに近い感じ。やはり音色がオリジナルとちょっと異なるのだ。
というわけで、MP3のエンコーダではダメという判定だったiTunesだが、AACのエンコーダにおいては現状ではベストのようである。以上のような結果から考えて、AACを選ぶか、音質補正をかけたMP3を使ってみるかユーザーによって考え方は違うと思うが、ひとつの判断材料になるだろう。
[出典]http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20050829/dal203.htm
編集者コメント
MP3とAAC、正確にはAACの方が若干高音質・高圧縮(およそ1.4倍)を誇るとされていたが、これを実証する結果となった。
1997年4月にISO 13818-7として標準化されたAACは、今ではiTunesに代表されるようにApple得意のエンコード技術となった感を受ける。
iPodで聞くならば、AACに変換して楽曲を保存するのがベストであるといえそうだ。
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投稿者 iPod塾 : 2005年09月06日 16:41